初心者向け室内植物管理LEDライト育成ガイド(複数育成段階/品種対応)
前編
本書は、室内植物管理におけるLED補光の重要なポイントに焦点を当て、植物の異なる生育段階および一般的な屋内栽培品種に応じて、補光時間、照射距離、光強度、ならびに主な注意点を分かりやすく解説します。
日照不足によって生じやすい屋内栽培の問題を回避することを目的としたガイドです。なお、本書の内容はLED補光ライトに限定しており、自然光については特に言及しません。

図1:植物育成ライトの設置例(niwuno Q-pad,Nova)
第1章植物の育成段階別LED補光ライト
植物は生育段階によって光合成量の必要性や耐光性が大きく異なるため、LED補光は各段階に応じて適切に調整する必要があります。
光が強すぎることによる葉焼けや、弱すぎることによる徒長を防ぐため、本章では屋内栽培で一般的に用いられる植物を基準とした標準値を示しています。なお、特殊な品種については、それぞれの品種特性や要求条件に応じて微調整を行ってください。
1. 発芽段階
コアニーズ
低強度の光で発芽を誘導し、強すぎる光による胚根の成長抑制を防ぎます。この段階では強い光合成用補光は不要であり、光を感知させる程度の照射で十分です。
●光強度:
0~50 μmol/m²·s(ルクス換算:約0~3,000 lux)
温白色+赤色光のLEDライトを推奨します(赤色光60~70%、温白色30~40%)。
●照射距離:
30~40cm
ライト光源は育苗容器に対して垂直に設置し、近距離照射による局所的な高温で種芽が焼けるのを防ぎます。
●補光時間:
1日8~10時間
※24時間連続点灯は不要で、暗期を確保することで発芽を促進します。
●キーポイント:
発芽期は覆土または半覆土状態であることが多いため、補光は培地表層を透過する弱い光を中心に行います。
種芽が地表に出た後に徒長が見られる場合は、光強度を100 μmol/m²·sまで上々引き上げ、照射距離は変更しないでください。
備考: 補光ライトの光強度が高い場合は、照射距離を調整することで光強度をコントロールできます。適切な照射距離はライトの種類や出力によって異なるため、実際の使用環境に応じて調整してください。
可能であれば、光量子センサー(光強度計)を使用して測定することを推奨します。

図2:育成ライト使用例(niwuno Q-Pad 4000K)
2. 幼苗段階
コアニーズ
中程度の光強度で茎と葉を丈夫に育て、徒長を防止するとともに、幼苗のストレス耐性を高めます。この段階では、光合成に対する要求が徐々に高まります。
●光強度:
100~200 μmol/m²·s(ルクス換算:約6,000~12,000 lux)
赤色光55~65%、青色光25~35%、温白色約10%で構成されたLEDライトを使用します。青色光には徒長を抑制する効果があります。
●照射距離:
25~30cm
幼苗の生育にばらつきがある場合は、毎週ライトヘッドの位置を調整し、均一な照射環境を確保してください。
●補光時間:
1日10~12時間
固定した時間帯(例:午前7時~午後7時)に点灯し、屋内でも自然な昼夜リズムに近づけることを推奨します。
●キーポイント:
幼苗の葉は柔らかくデリケートなため、葉色が白くなる、あるいは葉先が焦げる場合は、照射距離を約5cm上げるか、光強度を約30%低下させてください。
反対に、葉が黄色くなったり茎が細長く伸びたりする場合は光不足の可能性が高いため、照射距離を短くする、または補光時間を延長する必要があります。

図3:育成ライト使用例(niwuno Reso 5800K)
3. 成株段階
コアニーズ
高強度の光によって光合成の要求を満たし、植物の形を整えるとともに、開花(観花植物)や結実(観果植物)を促進します。あわせて、株姿をコンパクトに維持することを目的とします。
●光強度:
200~350 μmol/m²·s(ルクス換算:約12,000~21,000 lux)
観葉植物の場合は、赤色光+温白色を主体とした配光を推奨します(赤色光50%+温白色50%)。
観花・観果植物の場合は、青色光の比率を高めた構成とします(赤色光50%+青色光30%+温白色20%)。
●照射距離:
30~35cm
大型の成株には複数のライトヘッドを使用し、株全体を均一に照射することで、局所的な光不足を防ぎます。
●補光時間:
1日12~14時間
観花/観果植物では、開花予定の約1か月前から補光時間を14時間に延長することで、開花および結実率の向上が期待できます。
●キーポイント:
成株は比較的耐光性が高いものの、高温期にはLEDライトの放熱に注意が必要です。
ライトヘッドと植物の間には十分な通風スペースを確保し、葉が長時間ライトに近づくことで乾燥や障害が生じないよう管理してください。
4. 植え替え/根切り後の発根段階
コアニーズ
低強度の弱い光によって植物のエネルギー消費を抑え、根の修復および新根の成長を促進します。強い光による水分蒸発を防ぎ、枯死リスクを低減することが目的です。
●光強度:
50~120 μmol/m²·s(ルクス換算:約3,000~7,200 lux)
純温白色のLEDライトを使用し、赤色光および青色光の比率を低く抑えることで、光合成によるエネルギー消費を最小限にします。
●照射距離:
35~45cm
ライトヘッドは斜め方向から照射し、切断部や傷口に垂直光が直接当たらないようにすることで、水分の急激な蒸発を防ぎます。
●補光時間:
1日6~8時間
短時間の補光で十分であり、暗期が長いほど根の癒合と回復に有利です。長時間の補光は避けてください。
●キーポイント:
発根段階では「散光補光」を基本とします。
用土が湿っているにもかかわらず葉がしおれる場合は、光が強すぎる可能性が高いため、速やかに照射距離を延ばすか、ライトヘッドを遮光してください。
新葉の展開が確認できたら、徐々に光強度を上げ、照射距離を短くし、対応する生育段階の補光基準へ移行します。
第2章 屋内で一般的に栽培される植物種別 LED補光ライト
屋内で栽培される植物は、品種や分類によってLED補光に対する光強度やスペクトル比率への適応性が大きく異なります。
本章では、屋内栽培で一般的な植物を5つのカテゴリに分け、それぞれのコア補光基準を示します。
いずれのプランも「日常管理時の成株」を基準としており、幼苗段階および発根段階については、第1章で示した対応する生育段階のパラメータを参照し、適宜調整してください。
1. アガベ
コア特性
強い光を好み、乾燥に強く、耐光性が非常に高い植物です。光不足になると葉色が暗くなり、株型が緩みやすくなります。
●光強度:
300~350 μmol/m²·s(ルクス換算:約18,000~21,000 lux)
赤色光+温白色を主体とした配光を使用します(赤色光60%+温白色40%)。
●照射距離:
20~25cm
近距離から強い光を照射しても、葉焼けが発生するリスクは低いです。
●補光時間:
1日12~14時間
年間を通して補光パラメータを大きく変更する必要はありません。冬季は14時間の補光を維持することで、耐寒性の向上が期待できます。
●キーポイント:
アガベの葉は厚く硬いため、定期的に鉢を回転させ、片側だけに光が当たることで株型が歪むのを防いでください。
2. ウルシ類
(屋内栽培で一般的な品種:オペルクリカリア パキプス、オペルクリカリア デカリーなど)
コア特性
中程度からやや強めの光を好みますが、強い直射光による葉焼けを嫌います。光不足になると落葉や葉色の黄変が起こりやすくなります。
●光強度:
180~250 μmol/m²·s(ルクス換算:約10,000~15,000 lux)
赤色光50%+青色光30%+温白色20%の比率で、株型と葉色のバランスを保ちます。
●照射距離:
20~25cm
ライトヘッドが葉先に直接当たらないよう、やや側方から配置してください。
●補光時間:
1日10~12時間
夏季の高温時には、光強度を180 μmol/m²·s程度まで下げ、葉先の焦げを防ぎます。
●キーポイント:
ウルシ類は葉が密生しやすいため、補光中は十分な換気を確保し、葉間に熱がこもって黄変するのを防ぎましょう。

図4:育成ライト使用例(niwuno Reso 5800K)
3. 塊根植物
(屋内栽培で一般的な品種:パキポディウム グラキリス、ディオスコレア・エレファンティペス など)
コアニーズ
塊根は高い水分貯蔵能力を持ち、茎と葉は中程度の光を好む一方、強い直射光には弱い傾向があります。
補光のコアは、茎葉の健全な生長と塊根への養分蓄積をバランスよく両立させることです。
●光強度:
150~220 μmol/m²·s(ルクス換算:約9,000~13,200 lux)
赤色光55%+温白色45%の比率を基本とし、塊根への養分貯蔵を促進します。
●照射距離:
25~30cm
ライトヘッドは茎葉との適切な距離を保ち、塊根部分(土中に埋まっている、または半分露出している部分)に直射光が当たらないよう注意してください。
●補光時間:
1日10~12時間
休眠期の約1か月前からは、補光時間を8時間程度まで短縮し、塊根が休眠に移行して越冬しやすくなるよう調整します。
●キーポイント:
塊根植物の茎や葉は比較的デリケートなため、補光強度を急激に変更しないでください。
光強度の調整は、1回あたり30 μmol/m²·s以内を目安とします。

図5:育成ライト使用例(niwuno CAUDEX PANEL)※日本未発売
4. 多肉植物
コアニーズ
中程度からやや強めの光を好みますが、光不足になると徒長や葉色の退色が起こりやすくなります。一方で、強すぎる光では葉焼けが発生しやすいため、光量のコントロールが重要です。
色付き(発色)を促すためには、光強度だけでなくスペクトル比率の調整も必要となります。
●光強度:
200~300 μmol/m²·s(ルクス換算:約12,000~18,000 lux)
色付き期には、赤色光45%+青色光40%+温白色15%の比率を使用します。
日常管理(養生)時には、赤色光50%+温白色50%の構成が適しています。
●照射距離:
20~25cm
蓮座型(ロゼット型)の多肉植物では、ライト光源を垂直に配置し、葉の中心部まで均一に光が当たるよう調整してください。
●補光時間:
1日10~13時間
春および秋(色付きの重要期)には13時間を維持します。
夏季は10時間程度に短縮し、あわせて光強度を200 μmol/m²·sまで下げることで、高温障害を防ぎます。
冬季は13時間に延長し、葉色の鮮やかさを高めます。
●キーポイント:
多肉植物の葉は水分含有量が高いため、補光中に葉が半透明になる、または焼けが見られる場合は、照射距離を約5cm延ばすと同時に、補光時間を2時間短縮してください。

図6:育成ライト使用例(niwuno Bar-Light 3500K)※日本未発売
5. 観賞用植物
(観葉植物/観花植物を中心に、ポトス、アンスリウム、スパティフィラム など)
コアニーズ
観葉植物は中程度から弱めの光を好み、強い光には弱い傾向があります。一方、観花植物は蕾形成期に中程度からやや強めの光を必要とし、品種による差が大きいのが特徴です。
補光管理のコアは、「葉色を安定させながら開花を促進する」ことにあります。
●光強度:
観葉植物:100~180 μmol/m²·s(約6,000~11,000 lux)
観花植物:200~280 μmol/m²·s(約12,000~17,000 lux)
観葉植物は、温白色50%+赤色光50%の構成を基本とします。
観花植物は、赤色光45%+青色光35%+温白色20%の比率を使用します。
●照射距離:
観葉植物:25~30cm
観花植物:20~25cm
観葉植物では強い直射光を避け、葉の黄変や退色が起こらないよう注意してください。
●補光時間:
観葉植物:1日8~10時間
観花植物:
蕾形成前:12時間
蕾形成期:12~14時間
開花期:12時間
上記を目安に管理すれば十分です。
●キーポイント:
観賞用植物は湿度の高い環境を好むものが多いため、補光中はライトヘッドが葉に近づきすぎないよう注意し、高温による水分蒸散で葉が乾燥するのを防いでください。
観花植物は開花終了後、光強度を観葉植物の基準まで下げることで、養分消費を抑え、株の回復を促します。
第3章LED補光の一般的な注意点
1、光スペクトル比率を調整できるLEDライトを優先的に選択する
植物の生育段階や品種ごとのニーズに柔軟に対応できるため、汎用性が高く、長期的に見てコストパフォーマンスにも優れています。
2、毎日6~8時間の消灯時間(暗期)を確保する
連続点灯は避け、暗期を設けることで自然な昼夜リズムを再現し、植物の代謝や生理活動を正常に保ちます。
3、補光中の室内温度を15~28℃に維持する
温度が高すぎると補光効率が低下するだけでなく、葉焼けや生育障害が発生する可能性があります。特に夏季は放熱と換気に注意してください。
4、LEDライトヘッドを定期的に清掃する
ほこりの付着は光量低下の原因となるため、光の遮断を防ぐ目的で、約15日ごとに柔らかい布で拭き掃除を行うことを推奨します。
補光パラメータ一覧表
| 分類 | 細分類 | 光強度 (μmol/m²·s) |
照射距離 (cm) |
補光時間 (時間/日) |
光比率推奨 |
|---|---|---|---|---|---|
| 育成段階 | 発芽段階 | 50-100 | 30-40 | 8-10 | 赤色光60%-70%+温白色30%-40% |
| 幼苗段階 | 100-200 | 25-30 | 10-12 | 赤色光55%-65%+青色光25%-35%+温白色10% | |
| 成株段階(観葉) | 200-300 | 20-25 | 12-14 | 赤色光50%+温白色50% | |
| 成株段階(観花) | 250-350 | 20-25 | 12-14 | 赤色光50%+青色光30%+温白色20% | |
| 発根段階 | 50-120 | 35-45 | 6-8 | 純温白色 | |
| 植物品種 | アガベ | 300-1000 | 15-20 | 12-14 | 赤色光60%+温白色40% |
| ウルシ類 | 300-1000 | 20-25 | 10-12 | 赤色光50%+青色光30%+温白色20% | |
| 塊根植物 | 500-1000 | 25-30 | 10-12 | 赤色光55%+温白色45% | |
| 多肉(日常) | 100-300 | 20-25 | 10-12 | 赤色光50%+温白色50% | |
| 多肉(色付き) | 250-400 | 20-25 | 12-13 | 赤色光45%+青色光40%+温白色15% | |
| 観賞用(観葉) | 50-300 | 25-30 | 8-10 | 赤色光50%+温白色50% | |
| 観賞用(観花) | 100-350 | 20-25 | 12-14(蕾形成期) | 赤色光45%+青色光35%+温白色20% |
注意: 本書の内容は、各種植物関連文献を参考に作成したものであり、あくまで参考情報として提供されています。実際の栽培環境や植物の状態に応じて、適宜調整を行ってください。
植物の育成は、光/温度/水分/用土/通風など、複数の要因が相互に影響し合った結果によって決まります。本書は、植物補光の基本的な考え方とロジックを分かりやすく紹介することを目的としています。
光は植物にとって、人間にとっての酸素と同じくらい重要な要素です。
